筆跡鑑定人ブログ
筆跡鑑定人ブログ−5 |
筆跡鑑定人 根本 寛 |
このコーナーに書くのは、事実に基づく、筆跡鑑定人の「独り言」 のようなものです。 お気軽にお付き合いいただければ幸いです。 ただし、プライバシー保護のため、マスコミ報道された内容は別にして、固有名詞 は原則的に仮名にし、内容によってはシチュエーションも最小限の調整をしていることをご了解ください。 |
他人が手を添えた署名は有効か |
■ | 交通事故の被害を疑われる
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■ | 友人に介添えしてもらっての署名
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■ | 手を添えた署名の問題は遺言書にもある なかなか難しいテーマである。このようなケースは自筆遺言書でも見られる。自筆遺言書の場合は、最高裁の判決から見ると、第一に遺言者が自書能力を有していることが前提条件である。そして、介添えの手が、@正しい位置に筆を置くため、A改行するためであること、さらに「筆跡に他人の意志が介入した形跡がない場合」に限り有効とされる。今回の鑑定は、他人に介入してもらったことを証明するもので、ちょうど逆である。
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■ | 書字技量が上の供述書への署名 資料B、Cが田中君の筆跡。Aが問題の供述書への署名である。資料Bはパスポート、資料Cは銀行カードへの署名である。田中君は高校生になってから来日したとのことで、資料B、Cを見て分かるように、幼稚な字画構成で書字技量は低い。書道なども習ったことが無いとのことだ。 |
一方、供述書への署名は、ギクシャクしてはいるが、やや右上がりに書かれた二画目の運筆や、何より四画から五画かけての続け書きなど、資料B、Cには見られない運筆であり、書道の素養を窺わせるものであった。別人の介入は明らかである。鑑定書には要旨つぎのように書いた。 |
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