筆跡鑑定人ブログ
筆跡鑑定人ブログ−32 |
筆跡鑑定人 根本 寛 |
このコーナーに書くのは、事実に基づく、筆跡鑑定人の「独り言」 のようなものです。お気軽にお付き合いいただければ幸いです。 |
筆跡鑑定書の信頼性 (09−3−12) |
■ | 『JW』で取り上げた司法のタブー 『JW』という不定期の雑誌がある。JWとは「ジュディシャル・ワールド」の略で、直訳すれば「司法の世界」ということになるが、意訳すれば「司法エンターメント」ということらしい。つまり一般に難しいと思われている司法(権力)の世界を楽しんでしまおうということらしい。 『JW NO5』 (リーダーズノート株式会社 TEL:03-5815-5428) |
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■ | 警察OBの鑑定人は意識改革が必要 この雑誌の中で、筆跡鑑定界の問題もテーマの一つになって、一澤帆布の例をはじめとして警察系の鑑定人が批判されている。その中でこの逆転判決の元になった遺言書の鑑定について、功労者である神戸大学院国際文化研究科の魚住和晃教授はつぎのように語っている。 筆跡鑑定は裁判官の心証固めの道具ではない。裁判官が真実に迫れるよう、専門技術者として協力することが本旨である。 |
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■ | 結局、公平な鑑定書が身を救う ところで、幸いにもJWでは、このような私の意見も取り上げてくれた。
筆跡鑑定のまとめの項は、つぎのように私の言葉で結んでいる。 |
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■ | 日本の筆跡鑑定の問題とは |
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■ | 鑑定界の構造的な問題が諸悪の根源である 警察系…つまり警察及び警察OBの鑑定が遅れているのは、司法を含む鑑定界の構造的な問題が根源である。具体的には、司法が、筆跡鑑定に関しては警察OBの鑑定人を偏重していることである。 |
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■ | 鑑定人同士で始めてわかるおかしな鑑定 裁判所から、鑑定の委嘱を受けたのなら、原告・被告のどちらに立つ必要もないと思われるが、不思議なことにそれがあるのである。私の見るところ、概ね、争いの当事者の規模の大きい方に加担することだ。または、裁判官の心証を察知して、それに迎合すると思われることだ。 |
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■ | 超一流の警察系鑑定人の極めて怪しい鑑定 私も、一澤帆布の教訓に学んで、皆様の役に立つよう倫理観の欠如した典型的な例を一つ示そう。この事例は、実は2月10日、TBSテレビ『ニュース23』で放映されたものである。ただ、テレビでは細かな部分はカットされていたので、いま一つ分かりにくかったと思う。そこで、ここでは詳しく実態を説明したい。ある警察系鑑定人と私が真っ向から対立した話である。相手の鑑定人は、科学警察研究所(科警研)出身で、鑑定の本も出しているまさに日本を代表するX鑑定人である。 心的外傷についてのウキュペデアの解説
心的外傷とは、外的内的要因による衝撃的な肉体的、精神的ショックを受けた事で、長い間心の傷となってしまうことを指す。外傷体験(traumatic experience)ともいう。これが精神に異常な状態を引き起こすと心的外傷後ストレス障害となる。 心的外傷は脳神経系への非可逆的ダメージであるので、心的外傷を伴う犯罪は、一般の傷害罪よりも重罪であるという考えが特に海外では増えてきている。
母親は、何度となく学校に対し指導を要請したが、学校側は母親の要請を無視し続けた。それだけではなく、むしろ母親に問題があるような対応であった。やむなく、母親は、学校と脅迫状を送ったと思われる子供の親を対象に善処を望む訴えを起したのである。 しかし、この三つの指摘は、かなりの問題がある。まず、Aで指摘の「第2画が短いこと」であるが、その特徴は対照資料の番号1、3、5、7、8と8文字中5文字に表れていて、むしろ同一人の筆跡であることを示唆しているともいえることである。 |
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■ | 個人内変動の大きい文字の鑑定方法 この「今」の文字に関しては、鑑定文字は一つしかない。しかし、この事件で調査した文字の中には、鑑定文字が4〜5字ある文字がいくつもあった。 |
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■ | 科学的な鑑定とは鑑定態度の問題である
ともかく、私は、この女学生は個人内変動が激しく、筆跡個性が安定していないことがわかった。このような対象者の場合、鑑定資料1文字では筆跡個性を的確に判断することはほとんど困難である。 @「第1、2画で作られるひとがしらが全体のバランスから見て小さいこと」である。 A「最終『フ』の字が全体のバランスから見て大きいこと」である。 この二つの特徴は、私の鑑定書では「書道手本」を提示しているから、そ の書道手本と比べていただけばわかりやすいはずである。スペースの都合で 鑑定・対照3文字のみ示すが、指摘した2つの特徴は、鑑定資料と対照資料 によく一致していることはお分かりになると思う。したがって、私の結論は 「同一人の筆跡」ということになる。 このように、対照資料8個は個人内変動が激しいが、同一人が書いたもの だから、そこには必ずや共通する筆跡個性があるのである。 「科学警察」などと標榜しながら、警察系鑑定人には「科学性」がないと
言われるが、その本質は、このような正しい鑑定態度が欠如していることが
本筋である。科学的とは、コンピュータを使うとか、顕微鏡を使うなどの問
題ではない。鑑定態度が科学的か否かなのである。 |
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■ | 警察系の鑑定と私の鑑定に対する当事者の感想
このようにして、私は20字以上を鑑定して鑑定書を作成した。ここで、
相手の鑑定と私の鑑定についての、依頼人の感想を紹介したい。 |
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■ | 鑑定人は真実を追及することが社会的使命である 今回のテーマは、特に当事者の意見は、私の宣伝のように誤解されるかもしれない。しかし、私が何故、このようなテーマをまとめたのかといえば、鑑定界の問題を解決していきたいという思いと同時に、己の鑑定業務が雑にならないようにしなければという自戒のためでもある。 警察OBの鑑定への批判も、自分は決してこのような仕事をしてはならないという鏡の役割にもなる。 裁判沙汰になり鑑定書を求める人たちの多くは、身に降りかかる困難から逃れようと極めて鋭い嗅覚を発揮する。鑑定人が作為を持って鑑定書を作れば、すぐに見破ってしまうのである。これは裁判の誤審についても同様だ。 世の中は広いとをくくっていてはいけない。真実で優れた技能の鑑定に邁進することこそが、鑑定人の社会的使命である。 |
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★筆跡鑑定の問題を特集した東京新聞があります。ご希望の方にお送り(無料)しますので、ご一報ください。 | |||
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