浅田真央さんと安藤美姫さんの筆跡

筆跡鑑定人ブログ-73

筆跡鑑定人 根本 寛
 このコーナーに書くのは、事実に基づく、筆跡鑑定人の「独り言」のようなものです。お気軽にお付き合いいただければ幸いです。ただし、プライバシー保護のため固有名詞は原則的に仮名にし、内容によってはシチエーションも、特定できないよう最小限の調整をしている場合もあることをご了解ください。

 

安藤美姫はスター性十分な資質の持ち主

浅田真央さんと安藤美姫さんは、言わずもがなわが国のトップスケーターである。日本の誇る二輪のバラとでもいうべき存在だ。ここ数年、二人は良きライバルとして私たちを楽しませてくれている。

この二人を筆跡の面から探索すると何が分かるのか探ってみよう。
まずは安藤美姫さんの筆跡である。彼女の筆跡特徴の第一は「強」字の「弓」の第1画・横画が大きめに書かれていることである。横に大きいのだ。これは、身体的な元気度を示している。

縦画に比べて横画は書くのにエネルギーが余分にいる。そこから、横画を強く長く書く人は体を動かすことが得意な人といえる。安藤美姫さんが体を動かすことが得意なのはいうまでもないだろう。さらに、この部分は最初のスタート時の筆跡だけに、「やるぞ!!」という彼女の強い決意が表れているようだ。

これを書いてもらったのは、ある競技会の前、他の選手と一緒に試合に向けての決意を書いてもらったものだ。それだけに、気分が高揚していたのだろう。

つぎの特徴は「美」の字の左右の払いが長めなことである。若い女性だから、熟年男性のように自分の気持ちを遠慮なく出すことはないようで、それなりに控えめである。それでも、特に中央の「美」字は大きく払っている。

左払いが長いことは、華麗なことや目立つことが好きという深層心理を顕している。同じタイプに、女子マラソンの高橋尚子さんやミスタージャイアンツ・長嶋茂雄さんがいる。この長い左払いは、人を引き付けるので我々はスター運などとも言っている。

しかし、「のんびり屋」の一面もありそうだ。

このタイプの人は、「目立ちたがり」ともいえる。目立ちたがりというとやや否定的な言い方だが、実は大舞台に弱いと言われる日本人には貴重な性格である。日本人には「皆と協調して控えめにしていること」というDNAが強いようで、その謙虚さが大舞台に弱いというパターンにつながっている。

しかし、「目立ちたい」「人の賞賛を浴びたい」という気持ちのある人は、当然ながら、大舞台ほどやる気が出てハッスルする。このような、筆跡が表わす特徴傾向は、無意識の深層心理の表れであり、本人も気づいてはいない。

つぎに右払いが長いこと。右払いは、「大」や「木」字などにあるが「道」字の「しんにゅう」等も同じである。右払いはたいてい最後に書かれる。それが、長く伸びるというのは、「一旦始めると、なかなか終わることができない」という性格(深層心理)の表れである。お気づきのように、これは男女関係にも影響する。右払いの長い人は「もう別れなければ」と理性では分かっていても情が尾を引くタイプといえる。

左払いと右払いが長い人に吉永小百合さんがいる。これは女優という職業にピッタリな性格と言えるだろう。つまり、ドラマのヒロインにのめり込み感情移入し、それを多くの人を惹きつけて演じられる資質だ。安藤美姫さんも、その優れたアクターの資質を十分に持っている。

最後は、「安」や「藤」の「冠」の下が空いていることである。少し隙間があるが、書道手本などではもう少しくっついている。これはどのような深層心理の表れなのか……。また、行動としたらどのような形で表れるのだろうか。

この特徴については、筆跡心理学の世界ではまだ定説はない。しかし、「ウ冠」を書いて一息いれる形だから、物事を収拾つけてから一息入れるのではなく、行動の途中に一休みするというパターンと考えられる。

……ということは、「せっかち」の反対で、おっとりしたタイプと考えられる。ズバリ言えば「のんびり屋」なのではないだろうか。妍を競う神経の疲れそうな女子スケートの世界において、これは一つの武器ではないだろうか。安藤美姫さんは、意外に「大器晩成」型で、これからも大きな伸びしろがあるようだ。

最後に、筆跡的に何か修正すべき点があるか無いかといえば、特には見当たらない。できたら少し書道を習い、全体としてのバランスを良くする程度だろう。そして、外国でも美しい漢字でサインして貰いたい。

浅田真央さんはこつこつ努力型の日本人の典型

つぎは、浅田真央さんの筆跡である。彼女は最近、最大の支援者であったお母さんを亡くし大きなショックを受けた。復調を見せていたやさきだけに、来年3月の仏・ニースの世界選手権の出来が心配されている。

しかし、私は筆跡から判断してそれは危惧していない。彼女の筆跡特徴は、全体的に見て非常に真面目で我慢強い。それは、困難に立ちむかうほど強くなる日本人の特質そのままだ。その粘り強い努力家の性格から見て、今度の困難を必ず乗り越え成長するだろう。

彼女の全体筆跡は、文字の大きさが一定していて、筆圧も安定して波がない。これは、こつこつと努力を積み重ねることができる継続力の強い性格を示している。浅田真央は天才だといわれている。もちろんそれは誤りではないが、私はむしろ努力の人だと思っている。

負けず嫌いの職人型(芸術家)でもある

「演」や「技」の文字をみると偏と旁(つくり)の間が狭めである。このような空間を「開空間(かいくうかん)」と呼び、ここの広い人は、おおらかで細かいことにこだわらない。人当たりはいいが、何か一つの技を極めるというようなことは得意ではない。

一方、浅田真央さんのように狭い人は、一つのことに集中する性格である。集中し熱中するから人にはできないような技を極めることができる。言い方を換えれば良い意味の職人気質(芸術家タイプ)である。当然負けず嫌いである。

「名人芸」といわれるような境地になるには、この一点集中型の性格に粘り強さが必要である。浅田真央さんは、粘り強さは基本的資質として持っている。ただ、今までは、その源泉は周囲の期待に応えようという気持ちと負けず嫌いから来ているように思う。

これからは、そうではなく、自らの執念としての粘り強さを望みたい。そんな深層心理を養うには、母を亡くしたこれからが良い機会である。そのために筆跡で留意することは「ハネ」を強く書くことである。

彼女の「浅」字を見ると、ハネは書いているが控えめであまり強くはない。実はこの筆跡は18歳のもので、今はもう少し強く書いているかもしれない。18歳という年齢は、周囲の人たちの意見も柔軟に取り入れていくことが大切だから、そこから見れば十分ではあった。

ハネを強く書き、払いを大きく書いて「美の極致」へ

しかし、これからは、自分の「本来的な性格としての粘り強さ」をさらに身に付けていく年代に入っている。無理に我慢して粘り強く行動するのではない。「内面から自然に滲み出るものとしての粘り強さ」を養っていきたい。その意味で、これからは意識してしっかりハネを書くようにすると良いだろう。

筆跡を変えるというのは行動習慣を変えることだが、時間をかけて習慣化していくと、それは深層心理に影響を及ぼすのである。「職業性格」というものがあり、例えば「警官」でも「医師」でも、長くその職業に就いていると、その職業が必要とする性格が身についてくる。それと同じである。

最後に、「央」の字だが、安藤美姫さんの「美」字に比べて最後の左右の払いが控えめである。これは、まだ、自己を抑制している形である。これを、もう一段長く大胆に書くようにしたい。

これが習慣になると、もっともっと自信に満ち、自分の美しさを存分に演出できるようになるだろう。その時、浅田真央さんは真に開花して「美の極致」という境地に到達するはずである。

最後にお二人に提案がある。それは、お二人とも少し書道をやっていただきたいということ。筆跡を見る限りお二人とも書道はやっていないようだ。特に毛筆による書道は集中力を高める効果があり、スケートにも良い結果をもたらすはずだ。大げさでなく、軽くでいいから是非トライされては如何だろうか。

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