横峯さくらさんを「勝手に筆跡診断!」

筆跡鑑定人ブログ53-

筆跡鑑定人 根本 寛
 このコーナーに書くのは、事実に基づく、筆跡鑑定人の「独り言」のようなものです。お気軽にお付き合いいただければ幸いです。ただし、プライバシー保護のため固有名詞は原則的に仮名にし、内容によってはシチエーションも、特定できないよう最小限の調整をしている場合もあることをご了解ください。

 

お洒落な句と根性のある筆跡

某ゴルフ雑誌の依頼で横峯さくらさんの筆跡を診断しました。色々述べたい筆跡ですが、雑誌は小さなスペースなので書き切れないことがたくさんあります。もったいないので勝手に補足診断をしてみます。

横峯さくらさんは、昨年、「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」で単独2位に入り1,200万円の賞金を獲得。その全額を、家畜感染症の口蹄疫被害の広がる地元宮崎県に寄付しました。自分の賞金だけでなく、観戦におとずれたファンにも寄付を呼び掛けるなど、積極的に行動しているとでも有名です。このような善行は誰しも思うことはありますが、実行するのは容易ではありません。

つぎの文字が横峯さくらさんの筆跡です。本当は「満開のさくら見上げるラフの中 苦境も忘れしばしたたずむ」という洒落た一句ですが、字数が多いので少しカットさせてもらいました。

横峯さくらさんの筆跡特徴として、第一に、「開」の縦画に独特の「うねり」が見られます。これがどんな意味を持つのかについて定説はありません。しかし「行のうねり」と本質的に一緒だと考えられます。行のうねりとは、例えば「しばしたたずむ」という一行があったとして、その行がうねることです。

運動神経抜群を表す「うねり」

この行うねりは、運動神経や音楽の才能などの発達した人によく見られます。行はまっすぐに書くことを推奨されます。しかし、まっすぐに書くというのは、感情やリズムを持つヒトとしては、ある意味ムリをして書いているわけです。

ヒトは、本来感情や肉体のリズムを持っていますから、その感覚に素直に身を任せれば、むしろ適度にうねったり、くねったりする方が自然だと考えられます。だから、行をまっすぐに書けるというのは、修練の結果、肉体を制御出来た人とも言えるのです。茶道、華道をやった方やお坊さんなどに見られます。

しかし、運動神経や音楽の才能などがよく発達した人は、そのような後天的な訓練を受け付けないのではないのかと思えるのです。あるいは、自分が生来的に持っているリズムの方が強いともいえるのでしょう。運動神経の発達した人などに行うねりが見られるのは、そんな理由があるからだと考えられます。横峯さくらさんは、その意味で非常に優れた運動神経の持ち主と考えられます。

頑固さを示す狭い「開空間」

つぎに「たたずむ」の「す」の字は、横線が左に突出します。これは聡明さを表しています。「一を聞いて十を知る」ような回転の速い頭脳ということです。日本の文字は、本来は縦書きですから左は進む方向です。ですから、その方向へ突出するのは、前へ前へと進みたいという意欲の表れと考えられます。

三番目には、「満」の字、偏と旁の間が狭くくっついてします。このような空間を「開空間」といいますが、ここが狭い人というのは、自分の考えややり方に固執する傾向があります。つまり頑固ともいえます。

頑固というと良くないように思いますが、逆にいえば、自信があり、信念が強いので、人に言われたからといって自分のスタイルを変えたりはしないということです。これで努力家ならば、普通の人には到達できない「名人芸」のような境地に到達できる人なのです。

常に全力投球の勝負師

さて、その努力家に関連して、最後の筆跡特徴として、どの文字も全て力の入った文字だといえます。だから、句は洒落ていますが、文字は決して流麗とは言えない力感のある筆跡といえるでしょう。

洒落て流麗に書こうとすれば、文字に大小をつけ力強かったり軽かったりと変化をつけるものです。ところが、横峯さくらさんの筆跡はそうはならずに、野暮くさいほどに力が入っています。しかも、「の」や「む」という最後の文字が大きめに書かれます。

これは、常に気を抜かずに全力投球し、しかも最後になるほど一層力が入ると言うラストスパート型の気質を示しています。女子ゴルファーといえば、華麗な印象がありますが、本質は勝負師です。まさにぴったりの気質ではないでしょうか。

横峯さくらさんは、少しオーバースイング気味の特徴があり、最近の整ったスイングの中ではやや異色ともいえます。「自信ある自己流は自信のない正統派に勝る」という言葉は、アーノルド・パーマーが言っていたかと思いますが、横峯さくらさんも、アーノルド・パーマーのような強いゴルファーの資質を持っていると言えるでしょう。

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