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筆跡鑑定人ブログ-49
- 筆跡鑑定人 根本 寛
- このコーナーに書くのは、事実に基づく、筆跡鑑定人の「独り言」のようなものです。お気軽にお付き合いいただければ幸いです。ただし、プライバシー保護のため固有名詞は原則的に仮名にし、内容によってはシチエーションも、特定できないよう最小限の調整をしている場合もあることをご了解ください。
公開された43歳の海上保安官の筆跡
英雄か……それとも守秘義務違反者か……「尖閣諸島」ビデオ流出の当事者、43歳の海上保安官はどのような人間なのか。
私のところへも、彼の書いたコメントをめぐってテレビその他のマスコミから問い合わせがあった。そこで、彼の筆跡から少し人間像を解明してみよう。つぎの図が彼のコメントである。名前は伏せられている。
第一に信念の強い「頑固職人型」
さて、筆跡からは3点指摘したい。第一は「詫」や「報」など偏とつくりのある文字で、その中間の隙間が極めて狭いことである。この隙間は、「気持」の大らかさを図るバロメーターである。つまり、隙間の広い人は気持に大らかさがあり、狭いことは自分の考えに固執しがちな心の余裕のなさを示している。
古来から、中国では「以」の字の内部(懐)が広くゆったりした人は金持ちになると言われていた。つまり、心の広い人には多くの人が寄ってきて、多くの人は多くの情報をもたらし、結果金持ちになるということだ。
一方、その懐が狭いということは、自説にこだわり他人の意見を容易に受け入れないということで好ましい人物とは言いにくい。しかし、人の性格は表裏両面から見ることが大切で、良い面から見れば「信念が強く節を曲げない」ということにもつながる。
そこから、私たち筆跡心理学の立場からは、このタイプの人を「頑固職人型」などと言っているが、このタイプで頑張り屋ならば、人の出来ない「名人芸」のような境地に辿り着くことも夢ではないといえる。
ともかく43歳海上保安官は「自分の考えに固執する頑固型の人間」だということが第一のポイントである。
第二に「ハネ」を書かない「浅慮?」タイプ
第二に、「意志」や「熱」の字を見ると、全く「ハネ」を書かないことがある。「心」や「丸」には本来ハネが書かれるのだが、それが全く見られない。
ハネは、最後まで力を抜かない書き方だから粘り強さに関係する。つまり、粘り強く、そこから責任感の強さにも通じるパーソナリティといえる。一方、ハネを書かない人は、行動は素早いが困難にぶつかると諦めが早い傾向がある。いわゆる「現代っ子」タイプである。
この粘りの有無は、行動傾向だが考え方にもつながる。つまりハネの強い人は熟慮型でじっくり考えて行動を起こす。ハネの弱い人は考え方もじっくり時間をかけることは少ない。つまり「浅慮」傾向になるわけだ。43歳海上保安官は「深く熟慮するタイプではなさそうだ」だということが第二のポイントである。
第三には「目立ちたがり」の深層心理があるらしい
第三に非常に面白いのは二回書かれている「本」という文字である。二つとも「左払い」が非常に長くなる。この左払いを書いた後、大抵は右に進む。つまり、左払いは途中経過の筆なのである。
実務的に書こうとすれば、この左払いを必要以上長く伸ばすことはしないだろう。それなのに、本人も意識しない間にスルスルと長く伸びてしまうのは何故かということである。
これは、「ちょっと格好良く見せたい」という深層心理の反映と考えられる。だからこの傾向の人はスタイリストが多い。たとえば、こういう場面で引用してはご迷惑かも知れないが、長嶋茂雄さんや女子マラソンの高橋尚子さん等がこのタイプである。また、数年前、日本中に一万円札を配って歩いた方も左払いは異常なくらい長かった。
ともかく、43歳海上保安官がスタイリストかどうかは知らないが、深層心理に「格好良く見せたい」という目立ちたがり願望があることは間違いなさそうである。
ということで、特に目立った筆跡心理学上から見た三点の特徴を指摘した。これをまとめて人間像を考えるとどうなるであろうか。
①第一に、自分の考えに固執する頑固職人型である。
②第二に、粘りはなく熟慮しない傾向で行動は早い。
③第三に、格好いいところを見せたいという深層心理がある。
いかがだろう。このように抽出してみると、今回の行動とまことによく整合するではないだろうか。いずれ落ち着いたら、できたらご本人に、あるいは彼を良く知る人に感想を聞いてみたいものである。
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